『ショーガール』


★★★★

ラジー賞をはじめとする数々のワースト映画賞受賞でお馴染みの『ショーガール』をようやく観ました。

監督のポール・バーホーベンは、おっぱい・陰毛・ゲロ・うんこなどなど下品さを何の躊躇もなく観せてくれる監督という印象があって、本当に素晴らしいと思うし、大好きです。下品なものが観たい!というのには、もちろん下心がないわけではないですが、実際に存在するものだし、そういうものに蓋をしてお高くとまってみたり、本当はそういう一面もあるてめーのことをないがしろにしてご立派な説教を平然と垂れたりするような奴らよりよっぽど信頼できるからです。繰り返しますが、自分にゲロやうんこ的な性癖があるのではなく、そういう汚いものを隠さず、映るべきポイントでちゃんと映すからこの監督は素晴らしいんです。わからない人は下品の部分を差別に置き換えてください(それでも嫌がる人はいるか)。ポリティカル・コレクトネスは声高に叫ばれる世の中なのに、「下品さ」に対しては不寛容というね。矛盾してるよ。

映るべきポイント、と言いましたが『ショーガール』はその題材からして、「常におっぱいが映っている」のが実に必然的なため、実際映画のほとんどで誰かしらのおっぱいが映っています。必然おっぱいです。それどころか、時代を感じさせる白いボカシが入るようなところも多々あります。ラジー賞やこの映画にああだこうだ文句つけてる人たちは、この点だけで烙印を押して思考停止してるとしか思えない。これなんかよりよっぽどクソな映画たくさんあるだろうが!槍玉に上げやすいからか!

いちいち怒ってしまい話が途切れてしまってますが、要はおっぱいがいっぱい映るよと。それだけでやっほーい!!となる人もいるでしょう。本当に健全な反応だと思います。僕も本来ならそうなるんですが、この映画ではなりませんでした。だってあまりにおっぱいが映るから。エロに関して語りだすと長くなるので省きますが、ずーっとおっぱい観てたら興奮しなくなるでしょう、そういうことです。この時点で、単なる「クソ映画」ならおっぱいに興味なくなったら観てられるもんじゃないはずですよ。でもこの映画はそうじゃない。ストーリーをないがしろにしたり、役者がテキトーに演技してたり、描写が手ぬるかったりしないからです。要するに向こうが本気で作ってるのがビンビン伝わってくる。

ストリップとベガスのショーはどのシーンも本当に素晴らしいです。ストリップは、おっぱい出した女の子がちゃらちゃらやってるんじゃなく、汗だくになるほど激しい踊りをしていて、なおかつ躊躇なく徹底して下品。ベガスのショーは、金がかかってそうなステージや舞台演出の上で、おっぱいを出したダンサー達がこれまた激しく踊る。ストリップほど露骨に下品ではないにしてもまあ下品ですよ。でも、おっぱいを出して激しく踊り続ける彼女たちは本当にカッコいいと思えてくるし、はっきり言って感動してしまいます。なんと表現したらいいのかわかりませんが、プロのかっこ良さです。ショーを観てる男どもは乳に吸い付きたいとか、ケツ触りたいとか思いながら観てるんだろうけどんなこたぁ関係ねぇ、とにかく私は踊る!!っていう感じが伝わってくるんです。

ストーリーもキャラクターも良いし。どの人物も本当に生き生きとしてて、主人公が最初に働くストリップの店長やその同僚、たまたまクラブで知り合った兄ちゃんなどなど、ちょっとした脇役たちも良い味出してます。

↑『キラー・スナイパー(Killer Joe)』でフライドチキンにアレをしていたジーナ・ガーションも好演!
ストーリーについて、「女の任侠映画」とはよく言ったものだと思います。主人公のノエミは、最初ただのバカ女にしか見えずイライラしてたんですが、だんだん一癖あるけど憎めないキャラクターに思えてきて、そんな彼女も紆余曲折を経て、最後、今まで築き上げてきたすべてをなげうって、親友のためにとる行動には涙せずにはいられません。

それと、この方のブログの、『ショーガール』と『恋空』のレイプ描写の比較が面白かったです。『恋空』のほうがマシって言ってる奴の方が狂ってるよ、っていうことです。まだ直接のシーンは一切カットして、事後のボロボロになった様子を見せるのならわかる。レイプをそのままこういうシーンにするのは一体どういう神経してるんでしょうか。これなら年齢制限も避けられるってか。映倫もひっくるめてバッカじゃねぇの。

ラジー賞が、実は賞もんの傑作なんだけど、この種のものは表立ってなかなか表彰されない、っていうところをカバーする存在としてあったら、この野郎、憎いことしてくれるじゃん!って評価も変わるんですが、歴代の受賞作を観るとそうは思えないのでやっぱりわかってねーよ!ってところですかね。悪評に関しては、ただ下品というだけで思考停止してるもんでなければ、当然あって然るべきというか、全然良いとおもいますよ(何様)。

僕がやっぱりこの映画が良かったよ!!って思えるのは、最初に書いた通りなんですよね。下品さに蓋することなく真摯に向き合って、「裸で勝負する女たち」にスポットを当てて彼女たちの生き様を描くことで初めて見えるものがあるんだ、と。まあ、あれやこれやと言ってきた僕も、正直観る前は「バカ映画」(「クソ映画」ではない)だろうとたかをくくってました。バーホーベン監督ごめんなさい。観てみたら「バカ映画」ですらなかったですよ、ただただストレートな素晴らしい映画でした。バーホーベン監督作の中でもトップレベルで好きになりましたよ!高橋ヨシキさんが紹介していた、「ショーガール鬼箱」がほしくなってきた…

ブラックブック [DVD]

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ポール・バーホーベン監督作の中で一番新しいかつ一番好きな作品。
これ2006年公開だから、そろそろ新作見せて下さいバーホーベン監督!

スターシップ・トゥルーパーズ [Blu-ray]

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これは小学生のころ父親と観た記憶が。
例によっておっぱいが映るので気まずかったけど、今観ても面白い傑作でしたよ。

忘れちゃいけないのがロボ・コップ。
そういえばトータル・リコールまだ観てなかった!