『ビー・デビル』


★★★☆

韓国産スプラッター映画。とにかく凄惨なもの残虐なものグロいものが観たければ韓国映画だ!というくらい、この手の韓国映画で満足しなかったことがないです。手ぬるい描写なんてあるか、痛い!グロい!残酷!!安心と信頼の韓国映画は純愛などではなく、人間の汚い所を見せつけてくるホラーとスプラッターだ!『哀しき獣』はアクションか…?

さて『ビー・デビル』ですが、冒頭、ソウルの銀行に勤める独身女性ヘウォンが、おばあちゃんに貸付できません!って言ってるシーンから始まります。

『スペル』を連想しちゃいますね!

で、まあなんやかんやトラブルがあって、休暇を取って頭を冷やしてこい、ということで子どもの頃に暮らした「無島」という思い出の島へ。名前からして良い予感しないんですが、そこはたった9人の住人が暮らす絶海の孤島、連絡船は1日に1回のみ、電話は島の長的なおばあさんの家に一つだけでしかも鍵が掛けられている。超絶閉鎖的な空間です。もう良い事なんて起こるわけない。

そこで出迎えてくれるのが、幼馴染のキム・ボンナム(ソ・ヨンヒ)、彼女は一度も島から離れたことがありません。人懐っこい笑顔で明るいボンナムはヘウォンを歓迎するのですが、裏では地獄のような苦しみを受けている。昼間は村の老人たちにこき使われ、夜は夫の弟に犯され、夫は夫で何かあると暴力を振るってくる。彼女には娘がいるけど、旦那の子どもではないし、誰の子どもかわからない。何人もの男に犯されたからだ、といいます。さらに夫はどうやら娘とやっている。もう最悪の状況で、何から何まで狂っている。

ここに外部の人間、ヘウォンが来る、ということで普通なら彼女がこの状況を変えていくのか!と思うのですが、彼女はただの傍観者。実は一部始終を見ていて、それでもボンナムに手を貸そうとしないんです。どうやらこの映画のテーマが「傍観者の罪」であるらしく、彼女は徹底して事なかれ主義を貫こうとします。

ボンナムは、このままこの島にいたら自分も娘もダメになってしまう、ここから逃げて憧れのソウルに行きさえすれば…!ということである日ついに娘と脱走するも、あと一歩…というところで夫に捕まり、連れ戻されてメッタメタに殴られ、蹴られる。娘はお母さんが殴られるのが一番嫌だ、と父親に噛み付くと、父親が振り飛ばし、娘は岩に頭を打って死んでしまう。

娘を葬り、死亡診断書を書きに警察がやってくるも、周りの人間はみんなして夫の弁護をし、ボンナムを嘘付き呼ばわり。結局娘がいなくなっただけで、島の状況は変わらず、またいつもの生活が繰り返されるのか…というところで、とうとうボンナムがブチ切れる。DVDのジャケットにもなっている上の画像が最高にカッコいいわけですが、鎌を持ったボンナムが次々に島の人間を片っ端からぶち殺していく!!まずは農作業の休憩をしている3人のババアどもから。突然鎌を喉元に突き刺し、血しぶきが出る。残りのあまりの恐怖に動けなくなり助けてくれと懇願しだすババア、腰を抜かして逃げ出すババアも順番に鎌でぶっ殺す。次は自分を犯した夫の弟、会うやいなや尻を掴んでくる、ボンナムは物ともせず鎌を喉の引っ掛け、じわじわと首を切断する。憎きクソババアは追い詰められて頭がおかしくなって断崖絶壁から飛び降りる!最後に夫、しつこく、何度も何度も鎌をぶっさし、切りつけ、「痛いなら味噌でも塗っとけ!」と血だらけ味噌まみれで死んでいく。

ここでカタルシスを感じないのは嘘だと思いますよ。こんな閉鎖的な状況で自分を救えるのは自分だけ。もう島から逃げてしまえば良いというものではなくなってて、娘を殺されている、しかも誰もその事実を語ろうとしない、こうなりゃとにかく片っ端からぶっ殺す!!この方法しかないわけです。正義とは何か、人を殺すことは悪なのか、などなど考えられるかもしれませんが、とにかくぶっ殺すしかないんだよ!!!

ヘウォンだけがこの状況から彼女を救えた、最悪の事態を起こさずに済ませられたかもしれない存在だったわけで、「傍観者の罪」ということです。最後の最後になってようやく彼女はそのことを自覚するんですが、まあ遅すぎるよね、もう取り返しの付かないところまで来ちゃったんだから、というダークな余韻を持って映画は終わります。

個人的に、もう少しボンナムの復讐をじっくり描いてほしかったとか、ボンナムとヘウォンのバディームービーとなってほしかった(ジャンルが変わる)とか、思うところはありますが、それでも十分凄惨なものを見せられ、イヤ〜な気分になったのでさすが韓国産スプラッター、ということで満足です。

余談ですがボンナム役のソ・ヨンヒは『チェイサー』で連続殺人鬼に狙われ続ける風俗嬢を演じてた人だったんだと後で知りました。あの役に続いてまたこんな役を…さすが、というかやっぱりというか、彼女の演技に拍手喝采を送りたいです。本当にすごい!!クソでゴミみたいな映画に出て、一生懸命演技するのも役者からしてみれば「プロに徹する」ことだとは思いますが、こういうものが観たいんですよ!

中でもこのシーンは凄かったなぁ…。完全無欠の説得力がありました、演技にねじ伏せられた。

本当に久々に心が折られた映画。
『哀しき獣』も傑作でした、ナ・ホンジン監督の次作は絶対に映画館に観に行きます。