『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』

原題:WIN WIN(2011/アメリカ)
監督:トーマス・マッカーシー
脚本:トーマス・マッカーシー
原案:トーマス・マッカーシー、ジョー・ティボーニ
出演:ポール・ジアマッティ、アレックス・シェイファー、エイミー・ライアンボビー・カナヴェイル、ジェフリー・タンバー、バート・ヤングメラニー・リンスキー、他

★★★★

ポール・ジアマッティが主演なこと、花くまゆうさくさんの去年のベスト10位に入っていたこと、邦題の副題のツボを押してくる感じ、などなどあって鑑賞しました。

僕的にはすごい好きな映画でしたヽ(゚∀゚)ノ

コメディの要素があるんですが、ほどよくテンションが抑えられていてクスッと笑える、でも話のリアリティ、重さはちゃんと保っている感じで15分くらい過ぎたあたりから映画にすっと入れた感じがしました。
(冒頭、子供が「Shit.」っていうところでこのコメディ映画のテンションが掴めるかと。)


ただちょっと邦題には疑問がありまして…


「ダメ男」(ポール・ジアマッティ)は弁護士で事務所を開いているも、不景気でコピー機のリース料も延滞していて、家の前の木を切り倒すための業者も呼べないような状況で、自分の依頼人である認知症のおじいさんの後見人になって月1500ドルの報酬を得て家計の足しにするも、自宅で世話をするという約束を反故にし、おじいさんを介護施設に入れてしまう。
「ダメ少年」は、そのおじいさんの孫で、隣の州に住んでいたが、ドラッグ中毒の母親のもとにいることが耐えられなくなって、ポール・ジアマッティの家に住まわせてもらうことになる。タバコ吸ったり、タトゥーを入れたりしていて第一印象は悪い。高校でレスリングをやっていて地区2位というかなりの実力者だが、教師の車を盗んだため退部になってしまい、それ以来離れている。
あえて言うならこのあたりがそれぞれのダメ、と言われるような部分なんですが、「ダメ男」と言われるほどダメじゃないよね…?(特に「ダメ少年」)
最高の日々、ってわけでもないのでこうなると邦題詐欺の部類か。
『WIN WIN』だけじゃなかなか手は出ないでしょうけど、もうちょっとなんとかならないものでしょうか。
そんなわけで予想していたものとギャップはあったんですが、結果すごく良い映画だったので大して怒りは湧いてないんですが、これでケチをつけられたらもったいない映画だと思うので本当に邦題をつける人、GOサインを出した人は責任を感じてもらいたい。
(『バス男』、『26世紀青年』は有名ですね。どちらも内容が良いだけに許し難い。)

…邦題についての文句はこのへんで。

映画本編のほうは、最後少し急いで畳んだ感があるものの、現実的な問題から逃げずにちゃんと正面から捉えていた点が非常に好印象でした。
ほとんどの登場人物に好意を抱いたのも、地に足の着いた人物描写ができていたからかなと。

特にこの後列右にいるポール・ジアマッティの友人がいいキャラなんです。
大工に奥さんを寝取られて離婚することになるんですが、彼の「奴とあの女のセックスばっかり想像してしまうんだ。このままだと気が狂いそうになる。俺には気晴らしが必要だ。」
っていう台詞にすごくグッときちゃったり…。
あと、『宇宙人ポール』の高慢なSF作家、シャドーチャイルド役のジェフリー・タンバーが出ていることに気づけたとき嬉しかったです。笑

「ダメ少年」の母親は、結局最後までよくわからない人のままで、母と子の別離の瞬間は哀愁がありましたが基本的には単なる悪い人、だったのでもう少し彼女の背景などわかればちょっとは救われたかなーと思いました。

でも全体的にはやっぱり好きな映画です。
なんだかんだ結構笑っちゃったし。
ラストシーンなんかもなかなか思い切ったな、ああでもそうか、あそこは伏線になってたのね、って思うような良い終わり方になってたと思います。


原案、トーマス・マッカーシーだったんですね。
冒頭のおじいさんの回想シーンは、『オトナ帝国』のひろしのそれを彷彿とさせる、涙なくしては観れないシーンでした。

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これも酷い邦題をつけられてしまった映画の筆頭にあがるもの。
本当に誰も得をしないのだから、その場しのぎでいい加減なタイトルをつけるのはもうやめて。