『クラウド・アトラス』


鑑賞:2013/03/22(ユナイテッド・シネマ キャナル

原題:Cloud Atlas(ドイツ・アメリカ・香港・シンガポール/2012)
監督:ラナ・ウォシャウスキートム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー
脚本:ラナ・ウォシャウスキートム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー
原作:ディヴィッド・ミッチェル
出演:トム・ハンクスハル・ベリーベン・ウィショージム・ブロードベントペ・ドゥナジム・スタージェスジェームズ・ダーシーヒューゴ・ウィービングヒュー・グラントスーザン・サランドン

★★★

マトリックスでおなじみウォシャウスキー姉弟と、トム・ティクヴァの3人の監督による、グランドホテル形式のSF映画。グランドホテル形式ってあまり耳馴染みがなかったんですが、要は複数の登場人物のストーリーを同時進行的に描く、群像劇みたいなものなんですね。

19世紀から文明崩壊後までの異なる時代に舞台を置いた6つの物語を同時進行で追っていくということで、なにやら実験的だな、これはどういう映画になってるんだろう、面白そうだ!!予告もよく出来ていて、結構期待していったため、今回辛口な感じになっています。要は、良かったところもあるんですが、悪いというか気になる点に目がいっちゃって。

まず、それぞれの時代に同じ俳優が違う役で(性別や、人種も変わっている)出ていて、恐らく特殊メイクとかも使っていると思うんですが、それをどう捉えていいかわかんなくて。同じ魂を持った輪廻転生の証なのか?かと思えば、そうでもないみたい。彗星型の痣がある者同士がたぶんそうなんでしょう。じゃあなんで同じ役者を特殊メイクだのなんだのしてわざわざ出す?うーーん。

タイトルになってる「クラウド・アトラス」っていうのは、1931年の時代の主人公が作曲する交響曲クラウド・アトラス六重奏」から来てるんですよね。「六重奏」は当然6つの時代と関わってくると思うんですよ。しかし、劇中でその曲を作曲するときとレコード屋ハル・ベリーが聞くときしか流れない(たしか)。映画の終盤、「クラウド・アトラス六重奏」が流れる中、6つの時代のクライマックスが同時進行し、広げた大風呂敷を一気に畳む、曲の盛り上がりが頂点に達する中、それぞれのクライマックスがピークに!!みたいな感じになったら「うおおおおおおお!!!」と座席から立ち上がるほど盛り上がったと思うのですが、2つか3つの時代の盛り上がりが重なるのが数回あるくらいでイマイチ絶頂に達させてくれない感じでした。なんだかなぁ。

それと、劇中で出てくる良さげな台詞。予告でも使われてました、すごく興味が湧く感じでした。
で、本編を観ても、確かにグッとくる台詞だけど、ただテーマを口で言ってるだけじゃん…としか思えなかった。そのSF的テーマを説明しちゃってる感じがしたんですよ。それを6つの時代を同時並行で描いて見せるんじゃないのかと。

あとエンドロール。音楽が盛り上がって最後のクライマックスと同時に、『Cloud Atlas』ってタイトルがぴたっと止まる!!じゃなくて、クライマックス終わって、次に割とおとなしめな曲が流れて、ふわーっと終わる。曲が良かっただけにね、ここで少しは挽回できたのに…と。

その他に、6つの時代の話がそれぞれ薄い。3時間しかないから仕方ないとはいえ。

僕は群像劇的な描き方をする映画が大好きなんですが、この映画があまり好きになれなかったのは、それぞれの登場人物が繋がっているようで大して繋がっていないように思えたからなんですよ。
それぞれの関連性は、痣とか書物、音楽、あと同じ俳優を使ったことで持たせてあるけど、それ以上のものがない。

でも、僕もこの映画を完全に理解できている気は全くしていないし、もっと理解している方の話を聞けば評価がころっと変わる…かもしれません。


あ、好きなところは、ペ・ドゥナのおっぱい。
じゃなくて、ペ・ドゥナが可愛い。
でもなくて、ペ・ドゥナの時代のシーンは大体面白かったですよ。(超適当)
やっぱディストピアがわくわくする!!
でもこの時代のシーンも全体のなかで見ればそこまでウェイトあるわけでもなく。

あと『ソイレント・グリーン』が出てましたね。偶然、ニッポン・ダンディで高橋ヨシキさんが紹介しているのを観ていたので知っていました。これはディストピア映画で、特権階級以外の貧しい人たちは合成食品を食べ、死ぬときは安楽死施設で前時代の美しい自然の映像を観ながら死んでいく…という話で、この合成食品というのは安楽死施設で死んだ人間を加工して作ってるんですよね。これを比喩にしてトム・ハンクスが言っていました、あとペ・ドゥナの時代にも同じような状況がありましたね。
でも、ここも「ほら、つながってるでしょ〜」って言いたいだけにしか思えなかったです。

それでもこの映画は、6つの時代を同時並行で、1つの映画の中で描こう!っていう実験的な姿勢はやっぱり評価するべきだと思うんで、そこまで嫌いにはなれないです。それが上手くいっているかどうかは別として。6つの時代を3時間で、っていうのは十分すごい、のかな…。僕は長いな〜と思ってしまいました。

一言でいうと、「なんだかなぁ。」という感じでした!
でも分かってないのかもね!

(4/21追記)

エンドロールのこの音楽はやっぱり素晴らしいですね。鳥肌立ちます。
こんないい音楽なだけに、曲のクライマックスと同時にエンドロール終わらせて欲しかった。

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まだウォシャウスキー「兄弟」だったころの作品。
正直僕は全然好きじゃないんですが…。

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ペ・ドゥナ出演の邦画。
『空気人形』より断然こっちです。